Chapter 3

地球温暖化が
主要因ではない。

しかし地球温暖化と無関係ではない。
雨の降る量や日数に変化が現れてくる。

「何十年という期間で見た場合、たとえば、平成30年7月に西日本を襲った豪雨や、令和元年に東日本に豪雨をもたらしたような台風が年々増えていれば地球温暖化の影響が疑われますが、数や量にほとんど変化はありません」と川瀬主任研究官は地球温暖化が昨今の豪雨や干ばつの主要因でないことを教えてくれます。しかし無関係とは言いきれないとも教えてくれます。「豪雨はもともと自然の変動として定期的に発生していましたが、2010年代は偶然にも多く発生したと考えています。そして地球温暖化による上乗せがあったとの研究結果も出ています」。

では今後の地球温暖化と雨の関係はどうなるのでしょう。川瀬主任研究官はこう言います。「『日本の気候変動2020―大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書―』によれば、平均気温が2度ほど上昇した場合、1時間に50ミリ以上の雨の出現回数や年間最大の1日に降る雨の量は増えると予想されていますが、雨の降らない日も全国的に増加します。つまり降るとなればドッと降る雨が多くなるということです。これからは個人の対応も重要になってくるでしょう。天気予報に目を向けたり、空を眺めたり、スマートフォンで雨雲の動きに気をくばるようにすれば、突然発生する短時間の大雨から広範囲で起こる豪雨まで回避することができるでしょう。その一方で地球温暖化を止めるための緩和策を進めることが大切と考えます」。地球温暖化を食い止めたとしても異常気象や豪雨は定期的に発生します。油断せず、日々の天気予報や空に目を向けながら過ごすことが、雨とうまく付き合う方法なのかもしれません。

川瀬宏明

気象庁気象研究所 応用気象研究部第二研究室 博士(理学)・気象予報士。1980年生まれ。2007年、筑波大学大学院生命環境科学研究科地球環境科学専攻修了。海洋研究開発機構、国立環境研究所などを経て、現在、気象庁気象研究所応用気象研究部主任研究官。専門は気象学・気候学、雪氷学。2019年度日本雪氷学会平田賞、2020年度日本気象学会正野賞を受賞。著書に『地球温暖化で雪は減るのか増えるのか問題(共著、ベレ出版)』、『極端豪雨はなぜ毎年のように発生するのか(化学同人)』がある。

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