Chapter 1

気象と気候は違う。

豪雨や干ばつは気象の現象。
地球温暖化は気候によるもの。
2つの違いを混同している人が多い。

※気象庁が豪雨と名付ける基準は、台風以外で、損壊家屋など1,000棟以上、または浸水家屋10,000棟程度以上の家屋被害、相当の人的被害、特異な気象現象による被害などが発生した強い降水があった場合としている。
 

「まずは気象と気候の違いを理解することから始めましょう」と気象庁気象研究所の川瀬宏明主任研究官は言いました。気象とは大気の状態、および雨・風・雪など、大気中の諸現象。私たちの日々の天気に近いものという理解でいいでしょう。一方の気候は、各地における長期にわたる気象の平均状態。気候値には普通、30年間の平年値を用いています。「つまり豪雨や干ばつは気象により起こる現象。地球温暖化は気候の変化を指しています。異常気象の主要因が気候と考えるには無理があるとまずは考えてください」と川瀬主任研究官は言います。

まずは極端な現象である豪雨についてお訊きしました。「豪雨を引き起こす要因のひとつが梅雨前線。前線は暖かい空気と冷たい空気の境目に発生します。平成30年7月に西日本を襲った豪雨、令和2年7月に九州を襲った豪雨などは梅雨前線によるものです。そして台風。令和元年に東日本を襲った豪雨は台風第19号によるものでした。最近は線状降水帯という言葉をよく耳にしませんか?簡単に言うと発達した積乱雲が次々と発生して列をなし、積乱雲群になって数時間にわたり同じところに停滞することで作り出される、強い降水をもたらす雨域のことです。また、地形が要因となって、太平洋からの暖かく湿った風が山にあたることで線状降水帯をつくるきっかけになることもあります。つまり豪雨は台風や前線という大気の現象に、地形が関係する場合もあるとご理解ください」と川瀬主任研究官は言います。

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水の循環システムの中でも大きな役割を果たすのが雲。水蒸気は空気中のチリとともに上昇します。上空にいくほど気圧が低くなり、水蒸気を含んだ空気は膨らみます。膨らむためにはエネルギーを使うので、温度が下がり、水蒸気は水滴に姿を変えます。この水滴が集まったものが雲の正体。雲の中の水滴が増えてぶつかり合い、大きな水滴になると重さに耐えきれずに雨になって落ちてきます。

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