Chapter 2

歴史と文化を芸術で。

地域に根付いた
芸術祭のカタチを未来へ。

「みずとつちの芸術祭」は、アーティストと市民、そしてアートと日常の距離がとても近いことが大きな特長です。「アーティストが市内を自由に歩いて、空き家やカフェなどを自ら会場に選ぶことがあります。市民サポーターズ会議という組織があって、アーティストの制作を手伝ったり、作品ガイドを作ったりと、市民の方々もさまざまな形で関わっています。この組織は、市民が主体的に芸術祭に参加し、地域の文化活動を支える重要な役割を果たしています」と小川さんが言えば、平岩さんは「市民主導への転換は、単なる運営形態の変化ではなく、芸術祭の意義そのものを広げるものになっていきました。新潟市民が主体的に関わることで、多様なアイデアや柔軟な企画、何より規模は小さくても、新潟ならではの企画や取り組みが行えるようになり、新しい可能性が拓かれました。まさに〝市民が育てる芸術祭〟としての進化が始まったのです」と笑顔で言います。これまでにはさまざまなプロジェクトが生まれてきました。空き家や古民家を再生し、アーティストが実際に滞在して制作を行い、地域住民がサポートする空き家プロジェクト。また、米や発酵文化をテーマにアーティストと料理人が共演し、新潟ならではの「水」と「土」の恵みを、食を通じて味わう体験プロジェクトなど。その数々は、水と土をテーマに、人と土地をつなぎ直す体験の場としての独自性を築くことにつながっています。今後の展望について平岩さんはこう語ります。「市民がもっと自発的に参加する芸術祭をめざしたいですね。ゴールがあるとすれば、地域の人々が主体的に文化を創造し、独自の祭りを作り上げることです」。有名や無名とか、規模が大きいとか小さいではなく、アートを通じて新潟市民が自分たちの土地の歴史や文化を知る機会となるだけでなく、持続可能な形で地域の魅力を発信できること。「みずとつちの芸術祭」はそんな魅力的なアートの祭典へと着実に成長しています。

みずとつちの芸術祭

「みずとつちの芸術祭」は、新潟市の豊かな水辺環境と土壌文化をテーマに、市民とアーティストが協働する地域密着型の芸術祭。2009年に「水と土の芸術祭」の名称で始まり、2020年に「みずとつちの芸術祭」に名称を変更。行政主導から民間主導へと移り、暮らしの場を舞台にした作品や参加型プログラムなどで、地域の歴史と文化の継承を未来へ結びつけています。

MizuMirai Vol.11

Special Feature特集①

今、南極で起きていること。
融けるから崩壊するへ。

融けた氷の水と暖かい海水によって、
氷がどんどん剝がれていく可能性がある。

  • 詳しくはこちら