Chapter 1
その氷は、地球の記憶。
南極の氷は地球の記憶が保存されたタイムカプセル。
急激な気候変動や温度変化が
地球全体に与えた情報が詰まっている。
榎本特任教授が「国立極地研究所の南極・北極科学館」を案内してくださった時のことです。南極の氷を見せてくださいました。「耳を近づけてください。パチ、パチという音が聞こえますね。この音こそ氷に詰まった気泡が弾ける音。何万年前の記憶が現在に解き放たれる瞬間です」と言い、「雪が降り積もり、何十万年もの時をかけて圧縮されると氷床が形成されます。その氷床には時代ごとの環境情報が層となって残されます。その氷柱を掘削して持ち帰り、分析することで、木の年輪のように一層一層がその時代の証言者になってくれるのです」と説明してくれました。
その後、榎本特任教授は、国立極地研究所の地下にある「低温室」へも案内してくださいました。ここは南極の氷を保管し、分析している所。約6千年前の氷と約70万年前の氷を見せてくださいました。「あきらかに層の幅が違いますね。約70万年前の氷のほうが詰まっています。この層の一つひとつが当時の地球の記憶。気泡からは当時の二酸化炭素濃度が、融けた水の原子を調べることで雪が積もった時代の気温がわかります。さらに原子や分子の成分を分析すると火山噴火の影響、大気中の微粒子の組成までも知ることができます。それを俯瞰することで、地球が過去に何度も急激な気候変動を経験してきたという事実、そして氷期と間氷期のサイクルや温度変化が地球全体に与えた影響が読み取れます」と榎本特任教授は言います。「南極の『ドームふじ基地』において、1千年前、1万年前、10万年前と古い情報を読み取り、最終的に70万年前まで読み取ることに成功しています。現在は地球の気候システムが大きく変化したとされる100万年前の情報を得るため、さらに古い氷床コアの掘削プロジェクトが進行中です」と現在の取り組みも教えてくれました。
MizuMirai Vol.11
Special Feature特集②
みずとつちの芸術祭が
伝えること。
新潟の歴史や文化を、
アートを通じて再確認する。
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