Chapter 1

まずは水の課題に特化する。

環境に目覚めたのは
中学の頃から。
まずは水の課題に特化する。

徳島県の「自然」と「インターネット」しかない環境で育った前田さん。幼い頃から生物学や、哲学に関心を持っていました。そしてアル・ゴア元米国副大統領の環境問題に関する講演を聞き、環境問題に目覚めたと言います。「アル・ゴア氏が『環境問題に取り組むと人類全体と仕事ができる。そして環境問題の解決を通じて世界中の人とつながることができる』とおっしゃっていました。世界には生物がいて、その生物が無数に集まった結果、大きな生態系ができています。しかしゴアさんは人間の環境だけが循環していないと言います。この解決こそが未来への課題であると学びました。水に特化しようと思ったきっかけは東日本大震災です。その前日が大学の合格発表の日で私は東京にいました。大震災でインフラが止まったとき、私たち震災でインフラが止まったとき、私たちは何もできない、インフラについて何もわかっていないと思い知らされました。水が3日間使えないと命に関わり、それらのバックアップが考えられていないのは問題なのではないかと。その問題が如実に現れたのが東北の避難所です。十分に生活用水が使用できず、衛生環境などの悪化によって命を落とす方もいらっしゃいました。日本の水インフラには大きな問題があると思い、水について調べるようになりました」。

土木から工業製品へ。
「スモール」をキーに水インフラの革新へ。

土木・建設業的アプローチから製造業的アプローチへ。前田さんが課題解決のために導きだした考えに「小規模分散化」というキーワードがあります。水インフラは巨大だという概念を覆して、小さくすることで課題を解決するという考えです。前田さんは言います。「徳島の田舎で暮らしていたときは、湧き水からホースで水を引いて使っていました。実にスモールで、シンプルでした。問題が起こればどこに原因があるかすぐにわかります。しかし現在の水インフラは大規模なシステムを前提としており動きがとりづらい部分があります。電車路線のようにどこかで事故が起これば複数の路線に影響が出てしまう感じと近いかもしれません。また、巨大なシステムを前提としているが故に整備・更新には莫大な費用がかかります。たとえばスラム街で水に困っている人が上下水道を整えようとしても、巨額のお金を捻出することはできません。しかしバイクを買えるような価格の小さな水インフラ製品があれば、それを使う人は多くいるはずです。そして開発に着手したのが「WOTA BOX」。プロトタイプ段階から被災地へ届けて支援活動を続け、同時に利用データの収集や実証試験も行って、2019年に製品化しました。幅も高さも1メートルに満たないスモールな製品ですが、水を生活用水にする処理と排水処理とを一気通貫で行えます。既存の水道から断絶した場所でも使える、いわば『持ち運べる水処理施設』、同時にそれは『水インフラの家電化』の第一歩でした」。

MizuMirai Vol.09

Special Feature特集②

嘆くだけで終わらせない。
ロスをゼロへ、そしてプラスへ変える。

年間523万トンのフードロスがあると言われている日本。
フードロスをターゲットとしたビジネスを展開し、
三方良しの展開をめざす企業の取り組みを追った。

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